第1回ジュエリー文化史サロン 講義要旨と感想
第1回 2013年7月27日(土)
○講演テーマ「ヨーロッパ・ジュエリーと西洋美術 様式と時代精神」
○講師 関昭郎氏(東京都庭園美術館)
●講演要旨 戸倉博之 岸あかね
近代・現代芸術は生命(いのち)をテーマにしたものや、多くの人に大々的、公共性、
共通意識をテーマにしている。
1990 年代までは、「物から受ける印象」がテーマになっていた。
ラファエル・ロサノ・ヘメル:画像データ「パルスルーム」心拍を電球で表わす。
ダミアン・ハースト:画像データ「For the Love ofGod」ダイアモンド・スカル、
約120億円で落札。我々に身近な「家畜のスライス、ホルマリン漬け」作品が有名。
オットー・クンツリ:画像データ「chain」48個の金製結婚指輪を繋げてネックレスに。
新聞広告で募った。人々の想い、絆、永遠性を表現。
ヨーロッパのジュエリーの観るべきところ、時代や、時代精神とともに常に変化していくこと。
模様、全体の雰囲気に強い時代性が見受けられる。
その他の地域はあまり変化がないといえる。
○ヨーロッパの中世(5世紀から15世紀)
・宗教的なジュエリーと宗教的なテーマのジュエリー
・キリスト教と教会文化の影響大
・宝石はカボッションカット
・石留はコレットセッティング
○ルネッサンス
絵画と彫刻の時代
・ジュエリーは小さな彫刻、技術躍進。
・素材:金を多用。
・色彩豊かな宝石はファセットカットに。
ベンヴェヌート・チェッリーニ
・ダイヤモンドは原石の形をいかした八面体でライティング・リングが作られた。
・七宝技術が多用され、色彩が豊か。
ジュエリーはアート、アイデンティティと結び付けられた。
画像データ:1571 年フランソワ・クーリエ作エリザベート・ドートリッシュ
ジュエリーが肖像画の中で鮮明に描かれている、重要性。
ジュエリーをプレゼントしてくれた人との繋がりを表現。
画像データ:ネックレット、両端の丸い金具に紐、リボンを通したり服に直接縫い付けた。
画像データ:ハットバッジ
画像データ:シールリング(印章指輪)
画像データ:表面にローズカットのダイヤモンドを多用、センターにミニアチュール、裏面に色彩豊かなエナメルでの植物文様。
○17世紀
・光学的な屈折率の研究、カットの技術が発達。
・ブリリアント・カットが発明される。
・ダイヤモンドの多用。
○18世紀
・時代区分とバロック
・ロココのエレガントな趣味にあわせた「蝶結び(ボウノット)」や古典主義的なモチーフが取り入れられる。
・ドレスと装身具の一体化
画像データ:ボウノットダイヤモンド胸飾り
覆輪止めながらも小さな爪で石を留め、石の場面を広くみせる工夫がされている。
クローズド・セッティング。1760 年頃からシルヴァー。セッティングの裏に金箔を貼る技術。
○19世紀
・ナポレオンの時代
・センチメンタルジュエリー
・中産階級が増え、ジュエリーの大量生産に移行していく。
・歴史的主義様式(ゴシック、ルネサンス、考古学的様式)デザインの要請
これには知的欲求を満足させる役割があった。
1851 年、イギリスV&A ミュージアム(歴史趣味の象徴的建物)
この頃には昼間に身につけるジュエリーなども必要とされ、ジュエリーの多様性が求められた。
不特定多数への対面販売をする百貨店がはじまった。
リバティなどの百貨店へ。
参考資料:THE GRAMMER OF ORNAMENT 1856 OWEN JONES
1870 年頃からの、大量生産、過去の繰り返しからへの反動から創造性豊かなアールヌーヴォーがうまれた。
並行して、ベル・エポック(エドワーディアンも)なジュエリーもあった。
1882 年ラリックの登場。アールヌーヴォーはあまりにも今までとちがうデザイン性であった。
19 世紀は多くのジュエリーを作り、多くの人の興味をひく、相手のニーズをよむ作品作りとなった。
アールデコ:アールデコの二面性 現代主義の面と古典主義の面をあわせもっている。
モデルニスモ:スペイン、バルセロナのアールヌーヴォー。アントニオ・ガウディやリュイス・ドメネク・イ・ムンタネーゼツェシオン :ウィーン分離派。
ヨーゼフ・ホフマン「ストックレー邸」
○現代は異なった価値観をもった人々が都市に暮らしている。
お互いの違いを認めながら、楽しんでいく時代である。
ジュエリーのもっている表現力やアイデンティティは非常に可能性をもっている。
個人的な強い思い、パーソナルな思いこそ、実はインターナショナルなものである。
●講義を受講した感想
宮坂 敦子 さん
ヨーロッパジュエリーの歴史がコンパクトに分かる、
非常に勉強になったセミナーでした。
とくに、19世紀の項で
「対面販売を主とする百貨店ができたことで買い物の形態が変化した。
既製品を販売し、それを買いたいと思うお客さんに
店へ足を運んでもらうことが大切となった。
そのため、デザイン教育が国をあげて必要という気運になり、
イギリス全国に工芸学校が作られるなど、
デザイン教育が強化された」
ということは、はじめて知ることで、たいへん勉強になりました。
また、
1571年、フランソワ・クーリエ作「エリザベート・ドートリッシュ」の肖像画は『ジュエリーの歴史』でも見たことがありましたが、これほど鮮明にジュエリーのディティルが描かれているとは
知りませんでした。
今後、ジュエリーが描かれた絵画を見るときのヒントにします。
|