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日本の装身具ハンドリングゼミ 第19回

ここでは、会員の方のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた各種情報などを掲載します(順不同)。


中村 園子 さん

今回も大変面白いゼミでした!
日本の具象の表現の豊かさを改めて感じました。
植物や物が“枯れた”表現がとてもステキで、それをいいと思う感覚があることは日本人のDNAを受け継いでいるかなと思うと嬉しくなりました。

作品を見て感動するポイントは、構図だったり素材だったり技術だったり、それぞれありますが、作者がどんな情景を思い浮かべて作業したのかを考えるのも楽しみの一つです。
帯留め(10)の梅は、梅の花を卵の殻で表現したことも面白かったですが、伝統的な氷梅文様に螺鈿の丸い玉は、蕾なのか露なのか光の表現なのか、どんな情景を思い浮かべて制作したのか興味が湧きました。

他の作品もすごい作品ばかりで感動しました。
次回も楽しみにしています!

 


植田 友宏 さん

普段西洋のジュエリーを扱っている者にとって、帯留めは様々な面で発見と驚きがあります。まず、デザインの面では、ブローチと比べて機能性の面で薄く、小さい場面の中で2次元を3次元に見せる表現力と技術力が素晴らしいと感じました。浮世絵等も平面を立体に見せる表現力が日本独特だと思いますが、帯留めに転用された小柄や目貫等、帯留めの小さな薄い中に立体感を表現する刀装剣の技術力と四分一、赤銅等の合金と接合技術、描写力等当時の名工達の超絶技法にため息が出ます。特に光長と光春の作品と鮎と舟の作品は見事でした。

他にも洋風で華やかなモザイクガラス、セルロイドの軽やかな帯留めや有田や九谷、京焼等素材もバラエティー豊かで、当時の女性達がどの様な髪留めや着物で身に着けていたのか?全体像もイメージしたくなりました。

今回も大変勉強になりました。次回も楽しみにしております。


青木 千里 さん

日本の彫金師の技術、意匠を堪能いたしました。
和の装身具のデザインはわずかな高低差や凹凸感の中で実は見事な奥行きや空間の広がりを表現していることを改めて実感しました。
また江戸時代までの刀装具が明治時代はまだ女性のものに転用を許されなかったがこの時代には利用されたというお話を面白く拝聴しました。

ハンドリング作品で銘がゼミでは判明しなかったものを資料で調べてみました。「金工事典」by 若山泡沫

帯留(6) 春芳・・・高島春芳、小沢秀楽の孫で桂光春の弟子
参考(3) 春久・・・綿貫春久
参考(8) 光明・・・該当する人物が数人あり特定できず
帯留(3) 文字が判読できず調査続行中

ゼミでお尋ねのあった桂 光春の弟子で四天王と呼ばれたのは以下の通り。

中村春利(はるとし)、大木秀春(ひではる)
鈴木春盛(はるもり)、山下春興(はるおき)

作品の出来にも先生のご研究にも何の影響もないのですが、参考(3)の金具の植物はどうにも百合には見えませんでした。おしべの先端の形が違いますし、枝が草木というより樹木のようです。また切れ込みが入って二裂になった葉は百合にはなさそうです。この特徴ある葉を手がかりに探してみました。
どうやらモクワンジュあるいはソシンカという花で、ピンクに濃いピンクの筋が入る種類ではなかろうかと思いますが・・・。
いかがでしょうか?
中国では薬用植物のようです。
マメ科  Bauhinia


角元 弥子 さん

帯留ひとつから、どんどんグローバリゼーションの進む様子が見え、大変興味深いハンドリングセミナーでした。
最後の「朝(浅)妻船」の謎解きには大変盛り上がり、面白かったです。

今回「日本みやげ」という言葉が露木先生から聞かれましたが、旅のみやげと装身具は、深い関係にあると思います。

(イタリア製でないということでしたが)マイクロモザイクジュエリーはグランドツアーの時代にイタリアみやげとして人気のあったものですし、今回ハンドリングさせていただいた中に、満州みやげの分かりやすい清朝風七宝ビーズがありました。

日本に目を向けても、美術品としてだけでは生き残らなかっただろうと思われる地方の伝統工芸品が「装身具の形をしたお土産」として大量に存在します。 (もらった人が装いに取り入れるかは別として)

満州みやげの装身具があるなら台湾みやげの装身具はどんなものだったのだろう?と思います。
また、今回拝見した漆塗の帯留の中に、彫漆が盛んだった沖縄で作られたものがあっても全くおかしくないと思いました。

参考(1)目貫用金具 のモチーフについては、花とつぼみのボリューム感、葉っぱの形から牡丹だと思います。

以上、次回も楽しみにしております。


奥田 文子 さん

今回は様々な帯留を見せていただき、ありがとうございました。
細工の細かいものが多く、小さな世界に様々な技巧が施されていることに感動しました。

帯留(3)の鮎のリアルさに驚き、参考(6)のトンボや(8)の女性には怖さすら覚えました。

帯留(7)、(14)のモチーフの春蘭は、今よりも身近な花だったのでしょうか。
参考(3)の花も、いろいろな名前が挙がっていましたが気になります。

帯留(2)は裏も美しく、(12)は写真で思っていたよりも華やかで、身に着ける人の気持ちを浮き立たせるものだと思いました。

お話ででてきた、「ジュエリーとして身に着けたいかどうか」には考えさせられました。
いくら美しくても、そこで完成されていると、「身に着けたい」ではなく「見ていたい」気持ちになります。
身に着けたいと思わせ、身に着けた時に美しさが完成するのがジュエリーなのだと、あらためて思いました。


大崎 典子 さん

○帯留3、参考6、8
ルーペで目を凝らさないとわからないほどの細部まで細工が施されていて技術力や集中力の高さに驚かされました。
手に取らないとわからないほどの細工を、目線より低いところに着ける帯留に施す、というのは面白い価値観ですね。
江戸時代、裏地や黒生地など目立たないところに高級なものを使ったのと通じるものを感じます。

特に参考8の帯留用金具は、女性の薄く開いた目、 小舟の中の花や波などが、物語を表しているようで凄みさえ感じました。
会の中でモチーフは「浅妻舟」ではないかとのご意見があり、 長唄の歌詞を調べてみたところ、移ろいやすい心や身上を「花」「波」に重ねられており、膝を打ちました。

浅妻舟は江戸時代に英一蝶が描いて糾弾されて以来、人気の題材となったそうで、戦後1950年代まで小説や演劇にも取り上げられています。
今では知る人が限られていますが、当時は常識だったことは他にも色々とあるのでしょうね。

○帯留6
表面をマットに加工して曲線を重ねたデザインが非常に現代的で、大正〜昭和初期のデザインの広がりを感じさせられました。
新しいようで墨絵の風合いもあるところ、日本ならではのモダンさですね。

ハレを感じさせるもの、商売繁盛や健康、五穀豊穣を願うもの、季節の象徴など、願いや喜び、憂いが、当時の意匠によって帯留となって具現化されているのは、まさに「文化」です。
今回も素晴らしい装身具の数々をありがとうございました。



小宮 幸子 さん

前回に続き、今回も大正・昭和初期の帯留の豊かな世界を見ることができました。鎌倉彫、有田焼、九谷焼、七宝、モザイクガラスに合成樹脂まで、なんでもありといった印象です。 

ちょうどこの時代の着物は、カラフルで大胆な花柄や幾何学的な意匠など、今見ても非常に自由な図柄が多く、帯留もバリエーション豊かになるのは当然なのかも知れません。(27), (29)のモザイクガラスの帯留は西洋風でもあり、大正ロマンを感じます。

一方で、(3)鮎図、(5)菊花、(6)トンボなど、繊細な技巧の作品も見応えがありました。

ゼミの時間に話題になった参考(8)浅妻舟図や、(4)三番叟図などは古典の知識がなければわからない作品です。当時どれほど一般的な題材だったのかは不明ですが、一定の教養がある人々だけがわかるテーマの帯留めを身につけるという楽しみ方もあったのではないかと思います。


岩崎 望 さん

今回も多彩な帯留を手に取らしていただき、ありがとうございました。意匠が素材・技法と調和しており、帯留は奥が深いと思いました。

参考(3)はユリかサツキかで議論がありましたが、植物の専門家に聞いてみたところユリではないとのことでした。

ユリの花びらは6枚(正確には花弁が3枚、ガクが3枚の合計6枚)ですが、参考(3)は5枚だからです。ツツジの仲間ではないかとのことでした。


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