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日本の装身具ハンドリングゼミ 第18回

ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた図書資料情報などを掲載します(順不同)。


中村 園子 さん

今回の作品もバラエティーに富んでいて面白かったです。
日本の伝統的な感じと西洋のデザインが混じっていて、当時の女性は自分のファッションに何を取り入れようか、楽しかったのではないかと思います。

個人的には鉄の黒と質感にちょこっとある金がカッコイイなと思いました。鉄の打ち出しの立体感も日本の金属加工の歴史を感じられてよかったです。

今回は、帯留めは帯締めとのバランスで、だいぶ変わるということを感じました。
ここに身につける人のファッションセンスが現れるのですね。

毎回最後に皆さんの感想を聞くと新たな気づきがあり、それを聞いた後にまた作品を見返したいなと思いました。

 


大崎 典子 さん

初めて参加させていただき、大正〜昭和初期の帯留のバリエーションの豊かさに圧倒されつつ楽しく触れさせていただきました。ありがとうございました。

【帯留1,3】
鉄が使われた帯留について刀装からの流れと伺いましたが、鉄にはダイヤモンドがあしらわれ、赤銅にはあしらわれなかったらしいことを興味深く感じました。先生のおっしゃっていたWW1後の黒の流行と、大正9年を筆頭に増大したダイヤモンドの輸入量が影響しているのかと想像いたしましたが、いかがでしょうか。

【帯留7,35】
刻印を拝見していて気づいたのですが、「帯留7 真珠、ガラス、PM」と「帯留35合成サファイア、WG」には同じメーカー刻印が入っており、こちらは『業界マーク大鑑』に出ていた「世木延七商店」のものではないかと思いますが、いかがでしょうか。
私も同じ刻印の指輪を1点持っており、また同じ刻印の入った帯留も見かけたことがありますが、いずれもアールヌーボー/アールデコのものでした。今回の帯留2点もそうであれば、ひょっとしたら世木延七商店はアールヌーボーやアールデコのデザインを多く手掛けていたといえるのではないかと思います。
もしほかの方で同じような刻印をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どのようなデザインのものかお教えいただければ幸いです。

【帯留6】
「帯留6真珠。オニクス、ダイヤ、K15、P」の刻印ですが、□内にMとなっておりました。御木本のものということでしたが、明治・大正期の登録商標の書籍を確認したところ、よく知られた「貝にM」のほか「貝にNIPPON/JAPANESE/日本」の3種がある以外は見つからずにおります。K15を使っていたメーカーはほかに知られていないことから、御木本と判断されたということになりますでしょうか。


小宮 幸子 さん

帯留めという日本ならではの装身具に、これほど豊かな世界があったのかと楽しく拝見しました。素材も鉄、ガラス、蝶の羽、合成石まで使われているのを見ると、当時の自由な気風が感じられます。

サイズは小さくても細部まで丁寧に作られている作品に、つい目が行ってしまいました。(5)は洗練された、現在にも通じるモダンな意匠はさすがミキモト、といった印象です。(2), (6)もオニキスを効果的に使っていて、細工も繊細。女性なら欲しくなるツボを押さえています。鉄を使った(1), (2)はセットされたダイヤが綺麗なのに驚きました。金象嵌がさりげなく入っているところに日本の美意識が現れているようです。

着物コレクターの池田重子さんは、帯留めもたくさんお持ちでした。彼女のコレクション展を見た際に、帯留めが着物と帯をつなぐコーディネートの大切なアイテムとなっていたのを思い出しました。着物を着る機会が増えれば、再び帯留めの存在価値も見直されるのではないかと思います。


渕上 清志 さん

今回も貴重なものを見せていただきありがとうございました。
以下感想です。

櫛や簪、笄の会が続きましたが、 今回は宝石の帯留の回という事で、 材料、技法等、割と現代のジュエリーとの連続性も感じられるものも多かったです。
ただ、鉄とダイヤモンド、プラチナとガラスのように現代のジュエリーではあまり見られない組み合わせもあり、発想の自由さを感じました。


角元 弥子 さん

今回は素材もデザインテイストも多様になった、大正・昭和期の帯留をハンドリングさせて頂きました。

リストを頂いた段階で、一番楽しみにしていたのはNo.33「モルフォ蝶の羽根入り水晶」です。
ハンドリングでは、薄く軽くつくられた、帯締めの幅に馴染むモダンな形にますます惹かれました。
蝶の素材については、当時日本人の移住先になっていたブラジルからの土産品でしょうか。他の用途も含めいろいろ考えさせられます。

一番印象に残ったのはNo.6のアールデコ調帯留めでした。
組紐で作られた帯締めではなく、リボンを改造したものが通してあり、身につける人の強いこだわりに触れることができます。
使われているダイヤモンドが形もばらばらなオールドカットで、シャープになりすぎていない点も好もしいです。

No.9の翡翠の帯留めは、最初は頭と尻尾の形から鼠だと思っていました。
ちょうどハンドリングの翌日、琉球漆器をまとまった数見る機会があったのですが、「栗鼠と葡萄」モチーフがいくつもあり、どの栗鼠も鼠のような細長い頭の形でしたので納得した次第です。

次回も楽しみにしております。


岩崎 望 さん

帯留(13)サンゴは、制作年(1928年、昭和3年)が明かであるため大変貴重なものだと思います。
珊瑚の装身具は多く残されていますが、制作年が正確に分かるものはほとんど無いと思います。
材料はモモイロサンゴで意匠はバラですが、当時はモモイロサンゴが高価でした。
厚みのある材料を使い、深く彫ること(立ち彫り)で立体感を出しています。
現在もバラの彫刻は作られており、その起源を昭和の初めまで遡ることができます。
洋バラが日本に紹介されたのは江戸時代だと思いますが、そのデザインがいつから現れたのかについて興味が湧きました。

なお、帯留(14)のサンゴのメモに「ガーネ」とありました。
色合いが「ガーネ」に見えなかったので、あまり気に留めなかったのですが、昭和初期にはガーネはありません。
ガーネは深海サンゴの色合いの区分で、深海サンゴの発見は1970年、ミッドウエーといわれています。


青木 千里 さん

時代が現代に近づきハンドリング作品が質も幅も豊富になって興味がますます湧きます。
今まで戦前、戦後の作品の区別を 「刻印が陰刻か、陽刻か」 「ダイヤモンドのキューレットも有無」 という2点を目安にしていました。

今回のハンドリングで戦前にもすでにダイヤのキューレットが無いものがある事がわかり、目からウロコが落ちた思いです。
デザインや造り、素材などの様式を総合的に判断しなければいけないのですね。
もっと、もっと精進しなければ・・・。



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