日本の装身具ハンドリングゼミ 第9回ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見、お寄せいただいた図書資料情報などを掲載します(順不同)。 河西 志保さん まず、藤田君代コレクションの蒔絵の櫛10点をビニールの上からでも150〜200年以上前のものを実際に持たせて頂けることにより、感覚や重さや櫛から伝わるものが自然に感じとれ大変貴重な機会を与えて頂きました。 特にKF−07の周防染めの色と蒔絵と象牙の象嵌と江戸時代からの素晴らしい技法が拝見できました。もう1点は、KF−05だけ両方に櫛が出ている珍しいもので巻き髪に使っていた巻き櫛と伺い、このような時代からあったのだと櫛の形に納得致しました。 また、明憲皇太后の写真や絵にはイヤリングをしていない理由などやティアラやネックレスがまだ日本では作れず本当はどこで作られたものなのか明らかになっていないことなど大変勉強になりました。 そして、御木本の誕生から裏張り真珠の事、珠が小さいからアコヤパールの養殖が生まれたなどのお話も面白く、最後に露木先生が「人間が人間ではなくならない限り装飾品はなくならない。」と言われた一言に感銘を受け一生忘れられない言葉になりました。また次回を楽しみにしております。 吉田 明泰さん 今回もまた色々な作品を拝見でき、また歴史の話を伺え、大変充実した盛りだくさんな内容でした。ありがとうございます。 今回は、前回数点あった半透明な素材が無く、木製、象牙製のアイテムでした。 再結晶ルビーの件、「宝石百年」の編集にも関与された中村善吉氏の「宝石」という本に、飯田氏の記事には言及されていない制作者の名前入りで掲載されていました。年代にはズレが若干あります。この本、ライブラリーにも表紙の色違いで2冊、並んでいましたが、写真を撮ってみました。 桃に配される女性、「東洋画題総覧」によれば西王母とのことでした。 簡単ですが、取り急ぎご連絡させていただきます。 また次回、楽しみにしております。 角元 弥子さん 藤田君代コレクション(2回目) 2回目になり、前回拝見したものと併せて感じたことがあります。 (1)テイストがある範囲におさまっている (2)大陸風のデザインが含まれている(11月ハンドリングのKF-07、今回のKF-03) 次に、ひとつずつについて気になったことです。 KF-02 KF-03 KF-06 明治期の日本のジュエリー史について 知らなかったことばかりで学んだり調べたりしたいことがたくさんありますが、少ない情報からでも、欧米から次々に入ってくる新しいものに魅せられた、新しいもの好きの日本人の姿が目に浮かぶようです。 以上です。 次回も楽しみにしています。
岸 あかねさん 素晴らしいコレクションをみせていただきありがとうございました。 先日の文化史研究会で露木先生のおっしゃっていた、婚約指輪、結婚指輪について、
DIANA SCARISBRICKさんのRINGSにすこしかかれてあります。 青木 千里さん 一番印象に残ったのは櫛巻用櫛です。まるで魚の骨の様な両刃の形状、バランス良く全体に施された蒔絵がユニークで美しい一枚。 KF-10 を除いてどれもよくよく観察すると図柄は左右非対称で表裏とも異なっています。平面的な櫛ではありますが、ネックレス、 日本はそろそろ春めいて来たことでしょうね。こちらは今日も雪。今夜からはマイナス14℃の寒波が予想されています。 第9回ゼミで「ケンド ルビー」の件が講義にありました。
宮坂 敦子さん 明治中期の洋装装身具事情がよく分かり、非常に勉強になりました。 山岸 昇司 さん 初参加させて頂きありがとうございました。 まず、露木先生より参加者は指輪をはずすようにご指示があり、私も基本のキを失念 しておりました。 さて、拝見させて頂いた藤田君代コレクションのうち200年〜150年前の櫛をハンドリングさせて頂いた感想を述べさせて頂きます。 1.KF-01菊と蝶木蒔絵櫛(一部金箔張り) 高蒔絵の立体感、二色の金色蒔絵素材を配置よく使い分けて豪華さを演出する意匠に魅せられました。表裏にある3輪の菊花に金箔が貼ってあり今日においても輝きは失われておりません。 当時、行灯の薄明りだけが照らし出す暗い部屋の中でこの金箔の貼られた菊花だけがキラッと光を反射する様はなんとも風情があったことでありましょう。 高蒔絵の地の盛り上げには炭粉を使うとお聞きしましたのでNETで検索 (http://makie-museum.com/dic/dic4.html)してみるとほかにも銀粉、錫粉、砥の粉などがあり高上げの材料、技法は流派によって異なる、とありました。 こと蒔絵の世界にも多くの流派があってその匠の技を競っていたからこそこのような素晴らしい櫛が今日でも愛でられるのだと感謝であります。 2.KF-03桃と仙女(西王母)図木蒔絵櫛 拝見した当初、桃は吉祥のモチーフですからもう一面の天女は吉祥天かと思っておりました。 後日露木先生のタイトルに西王母とありましたので、いかなるお方かとこれまたNETで検索いたしました。 ―――――以下引用――――http://pengzi.maruzen.com/shenxian/xiwangmu.htm 西王母を描いた絵にはたいてい桃が描かれています。侍女が桃をささげ持っている図も多く見られますが、西王母の桃とはどんなものなのでしょうか。 古来中国では、桃は魔よけの力があるといわれ、仙人の杖に使われたり、お札に使われたりしてきましたが、崑崙山には王母桃または蟠桃といわれる桃があるといわれています。 この桃が不老長寿の桃なのです。この桃はとても小さく、銃の玉ほどの大きさしかないといいます。そして3000年に一度しか実がならないのだそうです。 西王母がこの桃が実ったのをお祝いして「蟠桃宴」を開きます。この宴に呼ばれるのは超一流の神様仏様たちだといいます。ちなみに、孫悟空はその宴に乱入に大暴れをしました。 ―――――引用ここまで―――― 3000年に一度の不老長寿の桃の実がとても小さいとのこと、であるならばKF-03の桃の面に丸く象嵌された夜光貝?の意味するところはその実ではあるまいかと想像が広がりました。 3.KF-08葡萄図象牙蒔絵櫛 象牙の生地を生かした櫛です。 私がかつて現役のころ象牙のネックレスが黄ばんでしまったので白くも戻せませんか?とのご要望がおおくありましたので象牙は黄変し汚やすいものと認識致しております。 その見地からKF-08を見ますとかなり美しく白肌を残しております。 髪に着用すれば鬢付け油が着き染み込み劣化して褐色シミとして白肌に現れそうなものですが本品にはそれすらもありません。 ということは当時高価な素材の象牙の櫛を鑑賞用コレクションとして「お宝」扱いされていたのではないかと思ってもみました。 4.KF-10月形銅覆輪櫛(上部真鍮飾り金具付) 一見、見るからになんとも渋い櫛で、木部の櫛歯の棟に銅の覆輪、その峰に真鍮素材の菊花が五輪均等に配置されています。 意匠は他の品と比べ棟幅がさほど無く独創的なアーチ型です。当時本品をお使いになっていたであろうお方はどのような婦人であったのか。 今でこそ金属部は酸化して渋くなっていますが当時は磨きこんで赤く光る銅の覆輪部に金色に輝く真鍮の花、髪にざっくり深く留められた その様は覆輪部のみがカラスの濡れ羽色に輝く黒髪の艶に応えるように金属光沢の冷たくも温かい色彩を放っていたことでしょう。 なんと粋な櫛でありましょうか。 ハンドリング作品総じて櫛の歯付けの技術が美しくこれが明治期の指輪の千透かしのデザインに通じていくのだと素直に感じ取れる作品群でした。 テーマ2のJC誌67号の解説もまた面白かったです。 なぜ御木本翁はじめ明治の人達は競って真珠養殖に必死になったのか。 それは天然真珠が小粒ながらも高価な装身具素材として既に日本人の知るところであったということであり近代化の波、洋装身具の波が大きく日本に流れ込もうとしているタイミングと合致したということがよくわかりました。 蛇足ながら、図14−4−2に長谷川時計舗の広告で気が付いたことは時計の針が1時52分を指していることです。 いまは皆10時10分を指すのが一般的ですがこんな処にも時代の変遷を感じることができました。 中村 園子 さん 藤田君代コレクション2 今回もとてもステキな櫛ばかりで、興味深く拝見しました。 明治時代中期 14 ティアラやピアスの話など、ジュエリーを通して明治の頃の知らなかった風習(考え方)や、海外と日本の関わりが分かって興味深かったです。 小田 晴子 さん 今回、初めて参加させて頂きました。 象牙の櫛がありましたが、あの後、象牙取り扱いの業者の方にお話ちょっとうかがいました。 あの均等に櫛を作る技術。どんな方だったのでしょうか。もう少し調べてみたいと思います。 山崎 真紀子 さん ハンドリングゼミに参加させていただきましてありがとうございました。 岩崎 望 さん KF-07「蝶図柳川櫛」 吉田 さやか さん 先日も大変興味深く櫛を拝見させて頂きまして、ありがとうございました。 外国では、蒔絵が好まれたとのこと、
君代夫人も外国人の感覚に近かったのだろうとのことで、
漆塗、蒔絵に詳しければ、もっと作品を理解できたのではないかと知識不足を認識させられた会でもありました。 さて、研究会後にお話しましたケンドルビー について、改めてこちらにてご提案させて頂きたいと思います。 たまたまですが、ケンドルビー が英語での kind of ruby と聞こえました。 研究会にてお話頂いたケンドルビーの内容からも外れませんし、当時の様々な石の名前が音で聞いたものをそのまま記載しているようにも感じるので、Kind of ruby と聞いた音を書いた、もしくはこの様に聞き違えたのでは?と思いましたが如何でしょうか。 当時は何を元に鉱物名を記載していたのか、英語からであれば、これも英語からである可能性はぐんと高まる様に思います。 岡本 有紀子 さん この度は初めての参加で少し緊張していたのですが、貴重な作品の数々に触れ、露木先生のとても丁寧で奥の深い解説をお聞きしまして、時間が経つのを忘れるほどのあっという間の2時間半でした。 次回の研究会も楽しみにしております。 土田 慶太 さん 前半は、前回に続き、藤田君代コレクションの櫛をハンドリング。 07は、朱い色が鮮やかな櫛。真ん中にはどこか現代的なデザインの蝶。蝶の部分は象牙の白色、周りは蘇芳染めの技法で着色されていると聞きました。 後半の明治時代の装身具の話では、四大貴石以外にも、オパール、アレキサンドライトなどの宝石付き指環がこの頃から販売されていたことを知りました。 小宮 幸子 さん 前回に引き続き藤田君代の素晴らしいコレクションを拝見することができました。KF-09(葵紋亀甲木蒔絵櫛)やKF-01(菊と蝶木蒔絵櫛)など、蒔絵の華やかな作品が多いものの、KF-10(月形銅覆輪櫛)のような、渋さの中にも繊細な細工や味わいのある作品も入っており、非常に吟味されて集められていると感じました。 今回拝見した中では、KF-01(菊と蝶木蒔絵櫛)とKF-06(瓜図木蒔絵櫛)の一部に金箔が貼ってあることに興味を惹かれました。実物を手にしてようやく意匠の一部分に金箔が貼られていることに気づくという程、蛍光灯など通常の明かりのもとでは金箔部分と金蒔絵との差異はかすかにしか感じられません。これほどデリケートな輝きの違いを作ったのはなぜなのでしょうか。裕福な家であっても蝋燭しかなかった当時の明かりの近くで、いかに美しく効果的に見せるかを考えて作られたためではないでしょうか。はかなげな、温かみのある蝋燭の光が櫛を照らした時、周囲の闇を背景に、金箔部分が鏡のようにきらりと反射する、そのような光景が想像されます。実際に検証することができれば…と思いました。 また、今までのゼミを通して日本人は有機質の宝石を好んでいたように感じます。鋭い金属光沢よりも、べっ甲、象牙、珊瑚、真珠などの柔らかく、しっとりとした「艶」に惹かれたのでしょうか。漆や蒔絵、螺鈿の輝きも同様です。湿度の高い日本の気候にも合っているのかもしれません。 現在に近づくにつれて、ダイヤモンドを始め、様々な種類の宝石、装身具が増えたため、好みは多様化し、ひとくくりにすることは難しいと思いますが、日本人が好んだ宝石をたどっていくと面白い発見がありそうです。
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