日本の装身具ハンドリングゼミ 第5回ここでは、会員のゼミでの感想や気づいた点、意見などを掲載します。 角元弥子さん 今回は江戸中期から後期の髪飾りをハンドリングさせて頂きました。 <金属で包まれた櫛 (江戸中期参考4-3)> 金粉を蒔いてある地に、赤い、とても小さな四角が散りばめられた部分がありました。 ゼミの後、調べてみましたら鶴は他のいろいろな鳥類とともに食用にされていたようです。 以上です。 小宮 幸子 さん 今回拝見した中では、べっ甲の山高形櫛(4-3-1)に心惹かれました。張り合わせをされていないべっ甲本来の華奢な薄さ、やや黒の目立つ斑の入り具合、なめらかな感触に魅力を感じたのです。 ハンドリングするなかで、時代により櫛の形や大きさ、厚みが変化することを感じながら、素材としてなぜこれほどべっ甲が愛されたのかが気になりました。私なりに三つの理由を考えました。まず一つ目の理由は、べっ甲が宝石に相当する透明感と光沢を持っていたからではないか、ということです。ガラスより軽い分、髪に挿した時の当たりも優しく、柔らかみのある輝きは、琥珀や瑪瑙のように感じられたと思います。二つ目の理由は、希少性です。べっ甲への憧れから擬甲が作られ、それを受け入れた女性たちによってさらにべっ甲人気が高まっていったのでは、と考えました。三つ目の理由は、「派手さ、華美」ではなく「渋さ、地味」を好む当時の嗜好です。殊にべっ甲の髪飾りに関しては、細工は素材を引き立てるためのものという印象を受けました。精緻な蒔絵や銀細工を施した髪飾りもある一方で、シンプルに削ぎ落とされた美しさが好まれていたのだと思います。 べっ甲細工の技術を継承する職人が減っているとの露木先生のお話は非常に残念に思いました。着物に日本髪という装いに、髪飾りとして使うには最適な素材ですが、現在の髪型や服装に装身具としてべっ甲を合わせるのは難しいのでしょう。タイマイは絶滅危惧種とされていますし、伝統文化として残していく以外に活路はないものかと考えてしまいます。
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